春愁や握りしめたる夜の数

夜の窓春になれない顔のある

酔えばまだ会える気のする春の人

春めくや一本指で弾くピアノ

返信の行間に咲く山桜桃

掛け時計五分進めて夏料理

爽籟や落日といふ良き響き

半欠けの月と薬の浅き眠り

余人には見えぬ昼月濃くなりし

襟足に風の集まる夕月夜

春風や手足の長い少女来る

白南風や海の匂いひを抱きける

切なくてゑくぼのやうな寒薔薇

切なくて回り道して杏花雨

とは言えど流れる星は海に果つ

致死量の愛が薔薇を咲かせをり

手のひらで掬う雪のような恋

 

春愁や握りしめたる夜の数

夜の窓春になれない顔のある

酔えばまだ会える気のする春の人

春めくや一本指で弾くピアノ

返信の行間に咲く山桜桃

掛け時計五分進めて夏料理

爽籟や落日といふ良き響き

半欠けの月と薬の浅き眠り

余人には見えぬ昼月濃くなりし

襟足に風の集まる夕月夜

春風や手足の長い少女来る

白南風や海の匂いひを抱きける

切なくてゑくぼのやうな寒薔薇

切なくて回り道して杏花雨

とは言えど流れる星は海に果つ

致死量の愛が薔薇を咲かせをり

手のひらで掬う雪のような恋

 

三日月の切っ先にある憂ひかな

蜜柑島漕いでも漕いでも絹の海

爽籟や人情噺にもらい泣き

何も彼も沈めて海は冬になる

中年の入り口で見る流れ星

冬菫静かに風を呼びにけり

初茜纏ひて山の登校子

初御空紙飛行機の一途なり

七草のようやく揃い日の暮るる

女郎花人差し指は誰の墓

水鏡抜けて貴女と夏の海

コスモスの棲み継ぐ丘に眠る父

手花火の消へて始まる恋一つ

名月や我に従う丸木橋

名月や恋しがる子を恋しがる

駆け出した少年の背の赤い月

花冷えや定めはいつも負へ動く

白球を雲より捕りぬ沖縄忌

寒薔薇白に拘る齢かな

目玉焼き潰す気分の夏はじめ

万緑に溺れる鳥や妻籠宿

田に映る貴女の月に便りする

深山を下弦の月の梳る

海鳴りに重ねる返事夕焼ける

嘘ばかり言う寒紅に小糠雨

春一番手足の長い少女来る

遠雷や前奏曲となる予感

静脈の流れ始める遠花火

時雨るるや不意に貴女が風になる

風花や何処かで女悪だくみ